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2007年8月15日
抹殺(東直己)
筋肉が徐々にマヒしていく難病に冒されている宮崎一晃は、車椅子の生活を送っていた。彼は、美貌の介護人篤子を伴い画家として活躍しているが、実はもうひとつの顔があった。車椅子に乗った殺し屋宮崎が狙うターゲットとは?8編を収録。
車椅子に乗った殺し屋という発想がユニークで面白い。けれど、内容的にはもう少し緊迫感がほしかった。人知れず標的を抹殺していく設定にしては、重みが足りないのではないだろうか。宮崎と篤子との関係にも工夫がほしかった。二人の心の内をもっと知りたい。なんとなく中途半端な描き方だった。心理描写がもう少しあればよかったのだが。また、殺しを依頼する側や殺される側にもそれなりの事情があると思う。そこのところをもう少しじっくりと描いてほしかった。そうすれば幅も厚みもある読み応えのある作品になったと思う。「抹殺」というタイトルの持つシリアスさが、作品の内容とかみ合っていないのも気になった。