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2007年8月14日

神様がくれた指(佐藤多佳子)


出所した日に出会った少年らのスリグループ。そのうちの一人を捕まえようとして負傷したスリの男を救ったのは、タロット占い師だった。奇妙な共同生活が、やがて二人の間に友情を芽生えさせていく。スリの少年たちを追いつめた先には、いったい何が待ち受けているのか・・・。

スリは犯罪。そうは思っていても、その場面を読んでいるとまるで生きた芸術作品を鑑賞しているような感覚にとらわれる。長年鍛え上げ、熟練した技。それはまさに神技と呼ぶにふさわしい。掏られる方が気づかないのも無理はない。
この作品に登場する辻牧夫も卓越した技を持つ。彼は、プライドをかけ少年たちを追い求める。やっと手がかりをつかみかけたときに起こった衝撃の事件!辻の苦悩や、周りの人たちの悲喜交々がていねいに描かれている。タロット占い師の昼間、辻を慕う咲など、辻のほかにも個性豊かで魅力的な人物が登場する。最後まで楽しんで読める作品だった。読後も満足♪

ゆこりん : 19:46 | 作者別・・さ他