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2007年7月10日

雪の花(吉村昭)


「天然痘で死ぬ人をなくしたい!」
医師としての純粋な情熱から笠原良策は、異国で発見された方法・・・「種痘」を福井でも行なおうとする。しかし、そこには多くの困難が待ち受けていた。

子供からほかの子供へ種痘を繰り返し、痘苗をきらすことなく運ぶという今では考えられない方法で、良策は福井へ痘苗を運ぶことに成功する。だが、それで終わりではなかった。種痘の重要性を多くの人たちに理解してもらうという大仕事が待っていた。古くからの考え方を取り除き、新しい医学の方法を実践しようとするとき、そこには多くの障害がある。良策がその障害を乗り越えたとき、人々も天然痘の死の恐怖から開放された。それはとても感動的だった。私財を投げ打ってでも人の命を救おうとした良策に、医師としての本来あるべき姿を見た。実在した人物を描いた作品だったので、とても興味深かった。

ゆこりん : 16:58 | 作者別・・よしむらあきら