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2007年7月 8日

摘出(霧村悠康)


乳癌根治手術で、重大なミスが起きる。右の乳房を手術するはずが、間違って癌のない左を切除してしまった!ミスを隠すため、病院側は左にも癌があったことにしようと画策するが・・・。

左右間違って乳房を切除した事実を、患者や患者の家族に知らせずに済ませようと画策する医師たち。そのために、本来癌がない左の乳房にも癌があったことにしようとする。自分たちのミスを隠すことだけを考え、患者の立場を顧みない医師。その態度には腹立たしさを覚える。作者が現役医師なので、手術の場面やプレパラート操作の場面には生々しい迫力があった。だが、この作品は医師側の視点からしか描かれていない。両方の乳房を切除された女性の苦しさや悲しみが読み手の心にあまり伝わって来なかった。患者の立場に立って、もう少し深く苦悩を描いてほしかった。そうすればもっと味のある面白い作品になったと思うのだが。

ゆこりん : 19:11 | 作者別・・き他