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2007年7月 2日

雪が降る(藤原伊織)


「母を殺したのはあなたですね。」
少年から届いたメールは、志村にある女性を思い出させた。遠い日の苦い思い出が彼の胸を満たし始める・・・。表題作を含む6編を収録。

登場人物の息遣いや手のひらにかいているであろう汗まで、読み手は感じることができる。会話の中での何気ない言葉、ちょっとしたしぐさなどで、人間像は現実味を帯び、深みを増す。どの話も、心理描写が抜群にうまいと思った。報われるか?報われないか?と尋ねられたら、報われないと答える話ばかりだが、彼らは決して人生をあきらめたわけではない。そのことが自然と行間から感じられる。どの話も面白かったが、「男」を感じさせる「紅の樹」が一番印象に残る。作者の独特の感性が感じられる作品だった。

ゆこりん : 16:42 | 作者別・・ふじわらいおり