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2007年6月18日

照柿(高村薫)


合田雄一郎は駅のホームで女性の飛び込み事故に遭遇し、そこで一人の女性を目撃する。名前は佐野美保子。事故直後に走り去った男性の妻だった。雄一郎が一目ぼれした美保子の陰には、幼なじみの野田達夫がいた・・・。

達夫は雄一郎の影であり、雄一郎は達夫の影だった。互いに相手を見つめたとき、自分自身の一番見たくない部分を見たような、そんな気がしたのではないだろうか。彼らはまるで、背中合わせに生きてきたようだ。そんな二人が、美保子を挟み対峙する。もし美保子が達夫と何の関係もなかったら、雄一郎もそこまでこだわらなかったのではないのか?もし雄一郎が美保子を気にかけなかったら、達夫の行動ももう少し違ったものになったのでは?いったん狂いだした歯車は思わぬ事態を招く。人を狂気に駆り立てるものはいったい何か?作者は緻密な描写で、読み手さえその狂気の中に引きずり込んでいく。内容の濃い、読み応え充分な作品だった。

ゆこりん : 17:22 | コメント (4) | 作者別・・たかむらかおる


コメント

ゆこりんさん…ご無沙汰です^^;。
これ読みたかったんですよ。
やっぱ面白そうですね。
この間ブックオフで買えばよかった⇒100円だったのです。
なんか高村作品のイメージと違うのですがどうでしょ?
高村作品未読なんですけどね(汗)。

投稿者 ユミ : 2007年6月18日 18:43

>ユミさん
こんばんは~。
私は高村作品7作目だったんですけど、これは
心理描写がすごいと思いました。
達夫の追い詰められていく心理状態がすごかった
です。ただ、緻密すぎてちょっとしんどかった
ところもありました。読んでみる価値はあると
思います(*^▽^*)
私としては「レディジョーカー」「マークスの山」
「黄金を抱いて翔べ」がオススメなんですけど(o^-^o)

投稿者 ゆこりん Author Profile Page : 2007年6月18日 20:26

うわぁ、自分にとってとても懐かしい本です。
もう何年も前に読んだので細部については忘れかけている部分が多いのですが、「熱い。熱すぎる。」という印象ばかり残っています(汗)。
ところでゆこりんさんは文庫版を読まれたのでしょうか?
単行本とどう違うのか、両方を読み比べないとわかりませんがそこに興味深々です。

投稿者 りべ Author Profile Page : 2007年6月18日 23:21

>リベさん
こんにちは~。
うんうん、「熱いです」(笑)
私は文庫本を読んだのですが、単行本とは
かなり違っているようですね。
「マークスの山」も単行本で読んだことがありますが、
こちらも文庫本とはかなり違うとか・・・。
興味津々です(*^▽^*)

投稿者 ゆこりん Author Profile Page : 2007年6月19日 16:56