« 異人たちとの夏(山田太一) | メイン | トムは真夜中の庭で(フィリパ・ピアス) »

2007年4月22日

デッドエンドの思い出(よしもとばなな)


傷ついた心を抱えたままで、家には帰れなかった・・・。婚約者に裏切られたミミは、おじさんの所有する店の2階に少しの間住むことにした。そのお店で働く西山君とのほのぼのとしたふれあいは、ミミの心を少しずつ癒していった・・・。癒されていく心をふんわりと描いた表題作を含む5編を収録。

「おかあさーん!」ではある事件をきっかけに自分の人生をあらためて見直し力強く生きていくことを決心した女性を温かな目で、「あったかくない」では幼い頃の思い出を切なく、「ともちゃんの幸せ」では幸せに恵まれなかったともちゃんをやさしく包むように、描いている。私が特に印象に残った「幽霊のいえ」では、家族や夫婦、恋人などの大切な人との関係をしっとりと描いている。死んでしまったのにそのことに気づかず、いつもと変わらぬ日常生活を営んでいる老夫婦の幽霊。その存在を静かに見守る岩倉君のやさしさが、泣きたくなるほど胸にしみた。読んでいて心地よく、心が温まる話ばかりだった。

ゆこりん : 15:45 | 作者別・・よしもとばなな