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2007年4月14日

魔術師(ジョン・ファウルズ)


フラクソス島のロード・バイロン学校に赴任することになったニコライは、前任者のミットフォードから島や学校に関するいろいろな情報を得る。ミットフォードは分かれる直前に、「待合室に気をつけろ。」という謎の言葉を残して去って行った。その言葉の意味するものを知ったときニコライは・・・?

島で出会った老人コンヒス。彼の家に招待されたときから、ニコライは彼の巧妙な罠にはめられていく。コンヒスの口から語られる彼の過去。はたしてそれのどこまでが真実なのか?ニコライがコンヒスの嘘を暴き出し、真実にたどり着いたと思ったのもつかの間、その向こうには驚くべきものが待っていた。ニコライ同様、真実をつかもうともがいてみるが、その努力がむなしい事をイヤと言うほど思い知らされる。コンヒスはいったいどこまで巧妙なのか?登場人物の誰の言葉を信じればいいのか?読み手は、作者に翻弄され続ける。「魔術」には必ずタネがあるものだが、この作品の中からそれを見つけるのは至難の業だと感じた。深い味わいのある作品だと思う。

ゆこりん : 16:42 | 作者別・・し他