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2007年4月 6日
鋏の記憶(今邑彩)
いろいろなものの中に封じ込められた思いや記憶。紫は、物に触れただけでそれらを感じることができた。ある日知人のところで触れた鋏。その中にはとんでもない過去の出来事が残されていた。表題作「鋏の記憶」を含む4編を収録。
4編の中で一番印象に残ったのは「鋏の記憶」だ。鋏の中に秘められた母親の心を思うと、胸が痛くなった。その母親がついに語ることのなかった真実が暴かれた時は、ちょっと衝撃的だった。悲劇的なラストでなかったのが救いだったが。「弁当箱は知っている」は、一人の男の哀切を見事に描いた作品だと思う。彼が守りたかったものがどんなにむなしいものであったか・・・。弁当箱に向き合う彼の姿を想像すると、あわれさを感じる。残る二つも面白かった。全体としてよくまとまった作品だと思う。読後も満足♪
ゆこりん : 15:00 | 作者別・・いまむらあや