« ナイチンゲールの沈黙(海堂尊) | メイン | いつもの寄り道(赤川次郎) »

2007年3月16日

花の下にて春死なむ(北森鴻)


句会の仲間であった片岡草魚がアパートでひっそりと死んだ。誰も彼の素性を知らなかった。かつて一度だけ彼と一緒に過ごしたことのある七緒は、草魚のことを調べようとするが・・・。また、草魚の遺した句には、ある事件の真相が隠されていた。表題作を含む6編を収録。

この作品は連作ミステリーになっている。「香菜里屋」という店を訪れる客。その客たちにまつわる話や、客たちが話題にするできごとから、店主の工藤が独特の感性で謎を解いていく。印象に残ったのは表題作の「花の下にて春死なむ」だ。一人の男の人生の悲哀さを感じさせる。また、その男に思いを寄せていた一人の女性の心情にもほろりとさせられるものがあった。ただ、全体的にストーリーにもう少し工夫がほしかった。謎が分かっても「なるほど!」とは思えなかった。工藤が作る料理の描写がすばらしくて、食べてみたいとは思ったのだが・・・。

ゆこりん : 20:33 | 作者別・・きたもりこう