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2007年3月14日

神無き月十番目の夜(飯嶋和一)


いったい小生瀬で何が起きたのか?大藤嘉衛門は、小生瀬村の住民300名以上が消えてしまうという異常な状態を目の当たりにする。その住民達は一人残らず殺されていた・・・。1602年10月に起こった惨劇。そこにいたるまでの過程を克明に描いた作品。

時代は変わり徳川の世になった。だが小生瀬村の住民達は屈しようとはしなかった。検地にやってきた役人をひそかに葬り去るという暴挙に出る。肝煎の一人石橋籐九郎が最悪の事態を避けようとどんなに奔走しても、事態は坂道を転がり落ちるように悲劇に向かってつき進んでいく。住民達の運命を先に知ってしまっているだけに、読んでいてかなりつらいものがあった。徳川家康に従うのか?逆らうのか?どちらにしても住民達にとっては悲劇だったと思う。だが、彼らが選んだ道が正しいといえるのか?村が滅びてしまったという事実を前にして、籐九郎の無念さをあらためて思う。歴史の闇に埋もれていた事件を元に書かれたものなので、生々しい迫力がある作品だった。

ゆこりん : 16:56 | 作者別・・い他