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2006年12月13日

嫌われ松子の一生(山田宗樹)


川尻松子が殺害された。父の姉である彼女の存在を全く知らなかった笙だったが、父親から松子のアパートの部屋の後片付けを頼まれたことがきっかけで、しだいに彼女の人生に興味を持ち始める。30年前に失踪した松子。彼女の人生ははたしてどんな人生だったのか?調べる笙が最後に行きついた「松子」とは?

幸せが、まるで砂のように指の間からこぼれ落ちていく。這い上がろうと、もがけばもがくほど深い穴に落ちていく。松子の人生はそんなふうだったに違いない。狂い始めた歯車は、元には戻らなかった。決して松子ばかりが悪いわけではないのに。彼女はいつも一生懸命だった。ただひたむきに生きていこうとしていた。いつも愛に飢えていた松子・・・。現実的にはありえないと思うところもあったが、人の運命はどうなるのか分からないということを、じっくりと考えさせられた。笙が松子の人生を追うことで、松子の人生にもほんの少し光が射したように思う。読み応えのある、面白い作品だった。

ゆこりん : 17:31 | 作者別・・や他