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2006年12月18日

求愛(柴田よしき)


翻訳の仕事をしている弘美は、友人由嘉里の様子がおかしいことに気づきながら仕事を優先させる。だがそのあいだに由嘉里は自殺。彼女は本当に自殺なのか?弘美はそのことがきっかけで探偵事務所の調査員となる。そこで体験したことは?表題作を含む8編を収録。

ほんのささいな、普通なら見逃してしまうようなできごとの中に、真実につながる糸が隠されている。探偵の仕事は、そういう糸を見つけ出すことなのだろうか。職業的に、人に嫌われることもある。また、探偵という職業に対して自己嫌悪になることもある。弘美は、悩みながらもプロとしての心構えを身につけていく。事件やトラブルの裏側に隠された人の心は、時にはせつなく、時には恐ろしく、時には悲しい。その描き方にはちょっと物足りなさを感じたが、ラストの表題作の「求愛」の中で行われた仕掛け調査は興味深いものがあった。まあまあの作品だと思う。

ゆこりん : 18:44 | 作者別・・しばたよしき