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2006年10月23日

風に舞いあがるビニールシート(森絵都)


ビニールシートが風に舞う。暴力的な風で引き裂かれないうちに、彼方へ飛ばされないうちに、誰かが手を伸ばして引き留めなくては・・・。それが口癖だったエドは、アフガンで命を落とす。失意の里佳を救ったのは?表題作を含む6編を収録。

誰にでも大切なものがある。それが、他人から見れば何の価値もないもでも、必死で守ろうとする。この作品に出てくる人たちはみんな不器用な生き方しかできない人たちだと思う。その不器用さが本人たちを苦しめている。だが、時としてその不器用さは、思わぬ結果をもたらすこともある。誰もが必死に生きている。そのことがどの話の行間からもにじみ出ている。6編の中で特に印象に残ったのは、表題作の「風に舞いあがるビニールシート」だ。愛し合って結婚しながら、彼を理解しようとすることに疲れてしまった里佳。自分の価値観のために結婚生活を捨て、アフガンで命を落としたエド。お互いがお互いを必要としていたはずなのに・・・。彼の最期の様子を知ったとき、エドの価値観は里佳の価値観となる。そのことが胸を熱くする。生きることを応援してくれる作品だった。

ゆこりん : 18:48 | コメント (2) | 作者別・・もりえと


コメント

こんばんわ。
表題作は切なかったですね。
お互い相手を思っているのに、想いが交差してしまっているのが本当にかわいそうでした。
ラストは、応援したくなりましたね^^
ただ、短編じゃなくて、長編でも良かったかなって思います。
個人的に「ジェネレーションX」が好きです。

投稿者 苗坊 : 2006年10月23日 22:11

>苗坊さん
( ^-^)ノ(* ^-^)ノこんばんわぁ♪
表題作切なかったです。お互いがお互いを
思っていても、一緒になれないこともあるんですね。
「ジェネレーションX」も2番目に好きでした(*^▽^*)

投稿者 ゆこりん Author Profile Page : 2006年10月24日 19:23