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2006年10月11日

でいごの花の下に(池永陽)


あの人はなぜ私の前から姿を消したのだろう?自殺をほのめかすメモを残し突然いなくなった嘉手川を追い求め、耀子は沖縄にやって来た。しかし、そこで彼女を待っていたのは、つらい現実だった・・・。

嘉手川の隠された秘密。そこに彼の失踪した原因があるはずだった。だが、私の中で、その真相が彼の失踪や自殺をほのめかすメモに結びつかない。嘉手川の取った行動も不可解。何よりも、いろいろな人が語る嘉手川の人物像がとても薄っぺらい。苦悩する彼の姿が実感として伝わってこなかった。耀子の人柄もちょっと理解に苦しむ。いくら心に痛手を負っているからといって、中学生の男の子を誘惑するなんておかしいのでは?ただ、どんなに月日が流れようと決して癒えることのない心の傷を抱える沖縄の人たちの思いはしっかりと伝わってきた。それだけが、この作品を読んだ収穫だったような気がする。

ゆこりん : 23:55 | 作者別・・いけながよう