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2006年8月26日

オニビシ(久間十義)


北海道日高地方。富産別というところに「オニビシ」と呼ばれるアイヌがいた。彼は、その生涯を昔ながらの伝統的なアイヌ流の生活で暮らしたアイヌだった。富産別に暮らすアイヌの人たちやその土地にまつわる話を描いた異色の作品。

自然の中で、自然と調和して生きてきたアイヌの人たちは、時代の大きなうねりの中で次第に自分たちの居場所を失ってゆく。北海道は開拓され続けてきた。開拓者は、アイヌの人たちとの共存を全く考えずに、彼らから土地を奪った。それによって得たものは大きい。だが、失ったものもそれ以上に大きいのではないだろうか。この本に収められている物語はどれもほろ苦かった。オニビシは、最後のアイヌらしいアイヌではなかったのだろうか。今も語り継がれる彼の物語を、まだ読んでみたいと思った。

ゆこりん : 18:01 | 作者別・・ひ他