« 初ものがたり(宮部みゆき) | メイン | 終わりの蜜月(大庭利雄) »

2006年8月18日

無名(沢木耕太郎)


父が脳内出血で入院。息子はすぐかけつけるが・・・。混濁してゆく父を見守りながら、息子は父の人生を見つめなおそうとしていた。

命を終えようとする父。その父を看病しながら、また介護しながら、息子は自分の中の父を見つめなおす。そして父との会話を思い出す。何気ない会話だけれど、そこに交わされる言葉の一つ一つが心にしみてくる。父は無名のままでの死を願う。息子は父の句集を出すことで、父の名を残そうとする。どちらの思いも分かるような気がする。生と死、親と子。だれでも生きていくうえで考えなければならないことだ。この作品で、ひとつの答えを見たような気がした。

ゆこりん : 17:47 | 作者別・・さ他