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2006年6月19日

北の旗雲(高橋揆一郎)


昼間は働き、夜は夜間学校に通う正彦。太平洋戦争末期から終戦、そして戦後の時代のうねりの中、10代の少年は何を見つめ何を思って生きていたのか?作者の自伝的作品。

お国のために死ぬことを教えられ続けてきた少年たち。彼らの日常生活は、今の少年たちとは比べものにならないほど、まじめで純真なものだった。だが、敗戦は彼らの生活を一変させる。ついこの間まで敵国だったアメリカとの関係は、戦後劇的に変化した。その変化についていけない人たち、ついていこうとする人たち。正彦の心も揺れる。その心の揺らぎは、しだいに彼を大人にしてゆく。戦争により運命を捻じ曲げられてしまった友、ほのかな思いを寄せる女性の存在などを織り交ぜて、作品は一人の少年の心のうちを鮮やかに描いている。とても興味深い作品だった。

ゆこりん : 17:19 | 作者別・・た他