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2006年6月 5日

讃歌(篠田節子)


かつての天才少女ヴァイオリニスト柳原園子。彼女は30年近く音楽から遠ざかっていたが、現在はヴィオリストとして人々の心に深い感動を与えていた。彼女の栄光と挫折そして再生を描いたテレビ番組は大反響を巻き起こす。だが、それははたして真実だったのか?

何がどうなるべきだったのか?何がいけなかったのか?柳原園子の半生を描いた番組は、事態を思わぬ方向に向け始める。どこまでが真実でどこまでが虚偽か?いや、もともとそういうものはなかったのかもしれない。人々の解釈の仕方、思惑、そして時には感情までが、たった一つしかない真実を多種多様に変化させたのではないだろうか。毀誉褒貶の嵐の中、園子は何を思っていたのだろう?どんなものでもそれを「極める」ということは容易なことではない。好きとか、愛しているだけでは乗り越えられない壁がある。そのことに気づいたとき園子は・・・・。とても切ない作品だった。

ゆこりん : 16:49 | 作者別・・しのだせつこ