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2006年1月12日

まぶた(小川洋子)


Nと初めて会ったのは、Nが鼻血を出して倒れているときだった。Nは、病気でまぶたを切り取られたハムスターを飼っていた。ずっと見続けなければならないという行為は、いったい何をもたらすのか?表題作を含む8編を収録。

見る、見ない。睡眠と覚醒。光と闇。生と死。そこにはまぶたが深く関わっている。目を閉じるだけで、自分が別の世界に引き込まれてしまったような感覚を味わう。まぶたは薄い皮なのに、時には人の心を左右するほどの力を持っている。作者の描く世界は独特だ。時には摩訶不思議で、時にはちょっぴり怖く、そして時には涙が出るほど切ない。この作品を読み終えてまぶたを閉じた時、その時に作者の思いが見えてくるような気がする。

ゆこりん : 14:52 | 作者別・・おがわようこ