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2005年6月17日

幸福な結末(辻仁成)


移植された角膜が見せる一人の男の幻。角膜提供者の女性と、いったいどんな関係があったのか?ブリュッセルから日本へ・・・。ヴァレリーはナツキマサトに会うためにやって来た。

角膜にも持ち主の思いが宿るのか・・・。ヴァレリーは次第に、自分だけにしか見えない男性に惹かれていくが、それが自分の思いなのか、提供者であるベアトリスの思いなのか分からなくなってしまう。確かめたくても確かめきれないもどかしさ。ナツキは自分を愛してくれているのか?それとも自分の中にひそかに生きるベアトリスを愛しているのか?行き場のない「愛」が漂う。作者の独特の感性が光る作品。だが、現実感がなく、ふわふわとしたあいまいな印象を受ける。感動的な作品なのかと期待して読んだのだが、ちょっと裏切られた感じだった。

ゆこりん : 16:37 | 作者別・・つじひとなり