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2005年5月23日
「藪の中」の死体(上野正彦)
ミステリー作品の中の死体を検死してみれば、意外なことが見えてくる・・・。もと東京都監察医務院の監察医の著者が、今までの経験からさまざまな事例を検察する興味深い作品。
事件が迷宮入りすることを「藪の中」と言うが、その語源が芥川龍之介の同名小説からきているとは知らなかった。著者は「藪の中」だけではなく、谷崎潤一郎、森村誠一、横溝正史そしてエドガー・アラン・ポーの作品にも、監察医としての目を鋭く向けている。また、今までに起こった注目すべき事件にも、専門家としての意見を述べている。読んでいて面白かった。
これからますます多種多様化するであろう犯罪。たった一つしかない真実を見極める監察医の必要性が、より求められていくに違いない。