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2004年12月 6日

ぼくのボールが君に届けば(伊集院静)


野球をしていたグラウンドの草むらで、少年は青いガラスで出来たピエロの人形を拾い、警察に届けた。ピエロの人形を捨てたのは、病気で入院している「ソウ」という男の子。少年はソウのために、試合でホームランを打つと約束するが・・・。表題作を含む9つの短編を収録。

どの話も野球にまつわるエピソードが書かれている。それは過ぎ去った日々の懐かしい思い出であったり、生きていく張り合いであったり。この作品を読んでいると、キャッチボールがとても素敵なことに思えてくる。人は、いろいろな人生を抱えて生きている。だがどんな人でも、キャッチボールのときは笑顔になる。それはボールと一緒に、お互いがお互いの心を受けとめ合っているからではないだろうか。切ない話が多かったが、読んだ後にやさしい気持ちになれる作品だった。

ゆこりん : 15:30 | 作者別・・いじゅういんしずか