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2004年12月 4日

アフリカの瞳(帚木蓬生)


世界のHIV感染者の三分の二がアフリカに集中する。ここでは、毎日200人の赤ん坊がHIVに感染して生まれてくるという。この過酷な現実を正面から見つめ、エイズとの闘いに明け暮れる日本人医師作田を、感動的に描いた作品。

恐ろしい現実がそこにはあった。毎日増え続けるHIV感染者。予防も治療も追いつかない。感染者は「感染した」という事実を、なかばあきらめの境地で受け入れる。そんなアフリカを製薬会社は、新薬の実験地域のように扱おうとする。悲劇が悲劇を生んでいく。悲劇の連鎖だ。こんな状況で、はたして未来は開けるのか?エイズ問題は私たちにとっても、もはや対岸の火事ではすまされない。火の粉が頭の上にぱらぱらと降り注ぎ始めている。アフリカ・・・。長年虐げられてきた大陸。「アフリカは世界を見つめる瞳だ。」という言葉がとても印象的だった。一日も早くこの世界からエイズの悲劇がなくなるようにと、願わずにはいられない。

ゆこりん : 15:09 | 作者別・・ははきぎほうせい