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2004年7月19日

嘘をもうひとつだけ(東野圭吾)


バレエ団で事務の仕事をしている女性が、自宅マンションから転落死した。自殺の線で落ち着こうとしていた事件だったが、加賀という一人の刑事が現れてから、事態は思わぬ方向に・・・。表題作を含む5つの作品を収録。

完全犯罪などということはありえない。加賀は、散らばっている事実をひとつひとつ丹念に拾い集める。その拾い集めた事実をつなぎ合わせたとき、見えてくるのは矛盾に満ちた証言。そしてその証言の向こうの真実。どんなに取り繕ってもしょせん嘘は嘘。真実はひとつしかない。事件は見事に解決する。しかし、犯行にいたる動機には、人間の切なさが隠されていた。罪を犯した人間を、心の底から憎む気にはならなかった。

ゆこりん : 20:45 | 作者別・・ひがしのけいご