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2004年7月18日

カノン(篠田節子)


かつて愛した男が自殺した。死の直前までバイオリンで「カノン」を演奏しながら。その「カノン」は録音され、瑞穂のもとに送られてきた。逆回転で録音された「カノン」。そのテープを受け取ったときから、瑞穂は言い知れぬ恐怖を味わうことになる・・・。

聴こえるバイオリンの音も、自殺したはずの香西の姿も、すべては瑞穂の心が作り出す幻なのか?それとも現実なのか?過去を忘れ、平凡に生きる日常に、不安は波紋のように広がっていく。人の思いとはこれほど強いものなのか。そして、その強さは死をも超越するものなのか。置き去りにしてきた過去の自分をしっかり見つめたとき、そこからまた新たな人生が始まる。瑞穂もそうあってほしいと願う。

ゆこりん : 19:35 | 作者別・・しのだせつこ