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2004年5月21日
観覧車(柴田よしき)
「失踪した夫を探してほしい。」妻の依頼に、唯は愛人の白石和美を尾行する。和美は尾行を始めてから2週間の間、毎日観覧車に乗り続けた。「何のために?」調査する唯の夫貴之も3年前に突然失踪し、唯は一人で探偵事務所を守り続けていた・・・。表題作を含む7編を収録。
全て唯の物語。ただし年月が過ぎていき、最後の作品は唯の夫の失踪後10年という設定になっている。依頼される調査、それに関わる人々の悲喜交々を通し、唯は常に夫貴之のことを思う。だが、積極的に夫のことを調査しようとは思っていない。真実を知りたいと思う反面、真実を知るのが怖いのだ。その間にも時はどんどん過ぎてゆき、唯の心も少しずつ変わり始める。人の心は急には変われない。物事をじっくり見つめられるようになるまでには、長い年月が必要なのだ。唯と夫の物語。作者にはぜひこの続きを書いてほしい。切に望みたい。
ゆこりん : 20:55 | 作者別・・しばたよしき