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2004年5月 4日

黄昏の百合の骨(恩田陸)


「自分が死んでも、水野理瀬が半年以上ここに住まない限り、家は処分してはならない」
祖母が残した不思議な遺言。理瀬は近所の人から「魔女の館」と呼ばれる家に、その遺言に従いやって来た・・。

祖母はなぜそんな奇妙な遺言を残したのか?
誰にもそれが分からないまま、理瀬と叔母たちはその家に住み続ける。一見穏やかな暮らしに見えるが、実はそれぞれの心の中には、それぞれの思惑が渦巻いている。人の心は何て複雑で残酷なものなのだろう。笑顔の裏に隠されたもうひとつの顔、心のひだにうごめくものを、作者は見事に描いている。何が、信じられるものなのか?遺言の真実とは?それが見えたとき、読む者は改めて人の心の恐ろしさを感じるに違いない。恩田陸の世界を、充分に楽しめる作品だった。

ゆこりん : 16:47 | 作者別・・おんだりく