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2004年4月27日

二つの祖国(山崎豊子)

1941年12月8日。日本の真珠湾攻撃により、アメリカに移住した日系人たちの運命が大きく変わった。財産を没収され収容所に入れられたアメリカ国籍を持たぬ一世と、アメリカと日本、二つの国籍を持つ日系二世たち。二つの国のはざまで日系人たちは苦悩し、やがてそれぞれの道を歩み始めるが・・・。

アメリカでは「ジャップ」と罵られ、日本では白い目で見られる。二つの国籍を持ちながら、そのどちらにも歩みよることができない日系二世たち。戦争は、親子、兄弟、夫婦までもを、日本とアメリカの両方に引き裂く。天羽賢治もまたその一人だった。弟のうち勇は米兵として戦死。そしてもう一人の弟の忠は日本兵として、賢治の前に現れる。兄弟それぞれの苦悩が痛々しい。作者は「東京裁判」の様子も克明に描いている。その息詰まるやり取りは圧巻だ。はたして責任はどこに、だれにあったのか?通訳や、通訳の誤りをチェックするモニターの仕事に当たる、賢治たち日系二世の揺れ動く心も見逃せない。賢治が思いを寄せていた梛子を待っていた運命・・・。「私はアメリカの敵だったのでしょうか?」そうつぶやく彼女に涙した。ラストに賢治が選んだ道は・・・。読んだ人はどう感じるのだろうか?私は、やり切れない思いだけが残った。

ゆこりん : 09:29 | 作者別・・や他