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2004年3月14日

号泣する準備はできていた(江國香織)


別れた男が電話で言った。「文乃が出てくる夢を見た。」と。愛し合っていた。そして今も愛してる・・・隆志。泣くに泣けない女性の心理を描いた表題作を含む、12編の短編を収録。

どの話も、日常のありふれたひとコマにすぎないのかもしれない。しかし、江國香織という作家の手にかかると、こんなにも鮮やかにきらめくものなのか!日常の中から切り取られた断片が、きらきらと舞っているような感じがした。心のひだの中を覗き込むような描写は、私をぞくっとさせる。心の揺れ動かない人間はいない。その揺れ動く瞬間を、彼女は見事にとらえている。切り取られた断片には、そこにいたるまでの過去がある。そして、そこからつながる未来もある。書かれていない過去と未来。それに思いをはせるのは、読者の役目なのだ。

ゆこりん : 14:55 | 作者別・・えくにかおり