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2004年3月12日
刹那に似てせつなく(唯川恵)
自殺した娘の復讐のため、並木響子は年齢を偽り、名前を変え、憎むべき男に接近し、目的を果たした。男を刺殺し呆然とする響子は、ふとしたことから19歳のユミと名乗る女性と逃亡する羽目になる。響子とユミ、それぞれ心に傷を抱えた二人の行き着く先は果たして?
自分の人生を変えてしまった憎むべき男。その男をそれぞれ殺し、逃亡する響子とユミ。奇妙な友情にも似た感情が、二人の間に芽生える。親子ほど年の違う二人だが、愛するものを失った悲しみ、人に裏切られて傷ついた心など、お互いがお互いを理解しあえる、同じものを持っている。どちらの女性も、決して多くは望んでいない。ただ愛する人がそばにいて、平凡な日常がそこにあればよかったのだ。それさえもかなわないのだとしたら、あまりにもせつな過ぎる。