« 世界の中心で、愛をさけぶ(片山恭一) | メイン | ワイルド・ソウル(垣根涼介) »

2004年2月 4日

Twelve Y.O.(福井晴敏)


沖縄から米海兵隊を撤退させたのは、たった一人のテロリストだった。彼の名は「12(トゥエルブ)」。
コンピュータウィルス「アポトーシスⅡ」と、切り札といわれた「BB文書」を手に、彼は米国防総省を脅迫し続けた。彼の最終目的は何か?江戸川乱歩賞受賞作品。

圧倒的迫力で、読む者を惹きつける。だが、この作品の根底に流れるのは、人間の心の奥にひっそりと存在していた悲しみだった。「12」こと東馬修一。父を愛することも、父に愛されることも知らずに育った彼の求めたもの、それは親子の絆ではなかったのだろうか。国家の思惑に翻弄された一人の男の憐れさ。「BB文書」の正体が明らかになった時、その思いはいっそう強まった。「死ぬな!生きろ!」かつて東馬に命を救われた平が、東馬に言われた言葉だった。平はそれと同じことを若い二人、護と理沙に叫ぶ。平の思いが、この二人に届くことを願った。

ゆこりん : 00:03 | 作者別・・ふくいはるとし