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2003年11月30日

青のフェルマータ(村山由佳)


自分の何気ない一言で父母が離婚し、母親からはうらまれるようになってしまった・・・。深く傷ついた里緒は、彼女自身の声を失ってしまう。里緒に声を取り戻させたいと願う父親は、彼女をイルカの住む島に連れてくるが・・・。

青く透明な世界を覗き込んだような物語だった。耳をすませば美しい音色が聞こえてくるかもしれない。お互い、人は人を知らず知らずのうちに傷つけている。そうとは気づかぬままに。それを癒してくれるのは、愛する人の存在だ。たとえ言葉にしなくても思いは伝わるものなのだ。「愛する者のために何かをすることは、何かをしてもらうことよりもずっと深く、わたしたちを癒す。」この言葉が、乾いた砂に水がしみこむように心にしみてくる。里緒の声を失わせたのも愛なら、取り戻せたのも愛の力にほかならない。そのことに気づいた里緒なら、これから先も強く生きていけるのではないだろうか。

ゆこりん : 08:15 | 作者別・・むらやまゆか