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2003年10月11日

いま、会いにゆきます(市川拓司)

いま、会いにゆきます
「また雨の季節になったら、戻ってくるから。」そう言い残し、澪は逝ってしまった。そしてその言葉どおり1年後の雨の季節に、彼女は愛する夫と息子のもとに帰ってきたのだが・・・。切ない愛の物語。

残された父と子の愛にあふれた生活。そこに現れた死んだはずの澪。また3人の生活が始まる。しかしそれは別離の予感を抱えた生活だった。どんなに愛していても、人はいつかは別れなければならない。そうだからこそ、平凡な毎日の生活も大切にしなければならない。「おはよう」「おやすみ」「おいしいね」「大丈夫?」「ちゃんと眠れた?」「こっちに来て」、そんな何気ない言葉全てに愛が宿っている。この文章を読んだとき、涙があふれた。何気ない生活がどれほど貴重なものかを、この本は語っている。自分の愛する人をもっともっと大切にしたくなる、そんな素敵な作品だった。

ゆこりん : 07:39 | 作者別・・いちかわたくじ