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2003年10月14日

陰の季節(横山秀夫)


警察人事を担当する二渡に、厄介なことが持ち上がった。3年前に天下りした尾坂部が、約束の任期を過ぎても辞める意思はないという。後任もすでに決まり、人事発表まで間がないときになぜ?調べるうちに、尾坂部の真意が見え始めてきた・・。表題作「陰の季節」を含む4つの短編を収録。

事件は警察内部で起こる。問題を起こしたのも警察官なら、それを調べるのも警察官だ。内部の事情を詳細に描いたこの作品は、作者の警察という組織に対する知識の深さを、まざまざと見せつける。殺人事件などの派手な事件を追うのではない。しかし、この作品から目を離せないのは、緊迫する人間の心理をたくみに描いているからだと思う。追い詰められた人間の息づかいが読み手まで伝わってくる。全てが終わった後に残る余韻・・。一味違うミステリーだった。

ゆこりん : 08:26 | 作者別・・よこやまひでお