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2003年8月26日

慟哭(貫井徳郎)


連続幼児誘拐事件。解決の糸口すらつかめず、警察は苦悩する。異例の昇進をした捜査一課長の佐伯は、周囲の反感、私生活の悩みを抱えながら、犯人捜しに奔走する。果たして犯人は?そこには、驚愕の結末が待ちうけていた。

必死に犯人を暴こうとする警察、そして幼児殺しの男。二つのモチーフでこの作品は構成されている。交互に描かれ、まるでモザイクのようだ。追うものと追われるもの。対比させた書き方が、読み手をぐいぐいと作品の中へ引きずり込んでいく。犯人はいつどのようにつかまるのか?しかし、目の前に突き出された結末は、意表をつくものだった。驚愕とさえ言ってもいい。人は悲しみがあまりに深すぎると、涙も出ない。心だけが慟哭するのだ。だが、その聞こえるはずのない慟哭が、耳に突き刺さるのはなぜだろう。

ゆこりん : 10:42 | 作者別・・ぬくいとくろう