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2003年8月30日

たそがれ清兵衛(藤沢周平)


お城でのお勤めが終わると、労咳の妻を介護するためにさっさと帰ってしまう。人は彼を「たそがれ清兵衛」と呼んだ。その彼が藩内の抗争に巻き込まれた・・・。表題作「たそがれ清兵衛」を含む8編の短編を収録。

この作品の中に登場するどの人物も、普段は陰口をたたかれたり、あざ笑われたりする、うだつの上がらない人物だ。しかし、剣の腕前は抜群だ。ひとたび剣をかまえると、人柄は一変する。さながらスーパーマンというところか。お役目のために剣をふるい、それが終わるとまたいつもの生活に戻り、他人に侮られたりしている。そのギャップの面白さがよく出ている。どの作品にも人を斬る場面が出てくるが、決して残酷には描かれていない。そのことも、ほのぼのとした気持ちで読める一因かもしれない。

ゆこりん : 10:45 | 作者別・・ふじさわしゅうへい