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2003年8月10日

償い(矢口敦子)


妻も息子も喪い、医者としての地位も失った・・。日高はホームレスとなり、ある街へたどりつく。そこで彼は、ある少年と出会う。その少年はかつて、日高が命を救った男の子だった・・。次々に起こる事件は、その少年と何か関係があるのだろうか?

人は心に深い傷を負ったとき、自分自身の存在さえ確信できなくなるのだろうか?仕事人間だった日高が受けた心の傷はあまりにも深かった。その彼の前に時々現れる少年真人。次々に起こる事件に、果たして彼は関係があるのか?事件の真相に迫るにつれ、日高は次第に自分を取り戻していく。この日高の心理描写がとてもよかった。人は苦しまなければ生きていけないのだろうか。日高、真人、そして刑事の山岸。彼らはそれぞれ苦悩しながら生きている。果たしてそこに救いはあるのか?「生きていていい。」ラストの、日高の言葉が心に響く・・・。

ゆこりん : 10:31 | 作者別・・や他