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2003年7月 4日

火の粉(雫井脩介)


かつて裁判で、勲が無罪の判決を言い渡した男。その男が隣に引っ越してきた。故意か偶然か?親切そうに見えた男だが、やがておかしなことが起こり始める・・・。

判決を言い渡した勲、その妻尋江、息子の妻雪見と、次々に視点が変わる。視点が変わる作品は他にもあるが、読んでいてどうも物足りない感じがした。老人の介護問題、夫婦間の問題、子供の問題、嫁姑の問題など、今の社会にあるさまざまな問題を取り入れてそれなりに面白いのだが。越してきた男武内の人間性も、もう少し掘り下げたものがほしかったと思う。武内がなぜ犯行に及んだのか、説得力に欠ける気がする。だが、動機が無くても殺人が数多く起こる世の中だ。武内のような犯罪を起こす人間がいてもおかしくはないのかもしれない。ラストは、やはりそうなってしまったか!という思いだった。意外性はないが、納得できる気がした。

ゆこりん : 11:02 | 作者別・・しずくいしゅうすけ