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2003年6月21日

アンクルトムズ・ケビンの幽霊(池永陽)


中学を卒業してから30年。鋳物工場で働き続けてきた章之。彼の心の中には決して忘れることの出来ない一人の少女がいた。スーイン。淡く切ない初恋の思い出が、30年の時を経て一つの形になろうとしていた。

タイから出稼ぎに来ていた青年、そして在日三世の少女がいた。私たち日本人は彼らを見るとき、特別な目で見ていないと言えるだろうか。章之は彼らを温かく見守り、そして、彼らにスーインの姿を重ね合わせる。「朝鮮人」というだけで不当な差別を受けたスーインとその母は、「北へ帰る」という言葉を残し、去って行かなければならなかった。章之がスーインとの決して色あせることのない思い出を手にしたとき、彼は嗚咽する。思いは深く、遥か・・・。ラストは涙なしでは読めなかった。心を打つ感動の作品だった。

ゆこりん : 14:31 | 作者別・・いけながよう