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2003年6月 7日

プリズンホテル4 春(浅田次郎)


ヤクザの木戸仲蔵が経営するホテルは、人呼んで「プリズンホテル」。ここで「日本文芸大賞」の発表を待つ甥の、作家木戸孝之介。彼は忽然と姿を消した育ての親、富江の行方を案じていた。ほかに客は、懲役52年の刑を終え出所した老人、演劇母娘、作家志望だった教師などなど・・・。悲喜交々の人間ドラマが、華麗に繰り広げられる。

木戸孝之介が義母や妻に暴力を振るうのも、幼い頃自分の一番愛していた母に捨てられたことが、トラウマになっていたせいだった。だが、自分を愛してくれる人間がたくさんいることに気づいたとき、彼は生まれ変わる。愛されることを知らない人間は、愛し方も知らない。しかし、愛されることを知ったとき、人は人を本当に愛することができる。さまざまな人間ドラマが生まれたプリズンホテル。人が人を慈しむ心を忘れない限り、このホテルはいつまでも読む人の心の中に生き続けていくのだろう。

ゆこりん : 14:14 | 作者別・・あさだじろう