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2003年4月16日

手紙(東野圭吾)


兄は、弟の大学進学の学費のために罪を犯した。弟は、兄が罪を犯したため大学進学もあきらめ、人々の白い目にさらされながら、生きていかなければならなかった。弟に手紙を送り続ける兄と、その手紙を拒む弟。果たして二人に救いはあるのだろうか?

貧しさが罪を生んでしまった。これ以上の悲劇はないだろう。お金がないということが、大切な人の人生を閉ざしてしまうとしたら、やはり罪を犯してでもその人を救おうとするものなのか?追い詰められた兄の心境を弟はどこまで理解できるのか?弟には、兄の罪のために自分の人生までもがめちゃめちゃになってしまったという事実しか、見えていない。だから兄の存在を消してしまいたいとさえ思う。そんな弟の気持ちも知らずに、兄はせっせと弟に手紙を送り続ける。この気持ちのすれ違いがなんとも切ない。やがて、お互いがお互いの気持ちを理解しあったとき、そこには新たな悲しみが待っていた。この二人に、笑いあえる日はもう来ないのだろうか?だとしたら、あまりに悲しすぎる。

ゆこりん : 15:03 | コメント (2) | トラックバック (2) | 作者別・・ひがしのけいご

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トラックバック時刻: 2007年6月 2日 21:07


コメント

加害者は当然、被害者とその家族、そして加害者の家族も悲劇の十字架を一生背負って行かなければならない。弟の為とは言え、弟を進学させたいという自分の望みの為に犯罪という手段で金を得ようとした兄。その結果が家族にどのような日々をもたらしたか…に思い至らず、手紙や謝罪を要求する兄。弟の積年の思いをぶちまけた手紙によって初めて自分の罪の大きさに気付いた兄。罪が許される事はあっても、消える事は無い。目に見えぬ絆は良い意味でも、そうでなくても、断ち切る事は出来ない。犯罪の頻発する社会で生きる私達に《犯罪の及ぼす影響》をもう一度考えさせてくれた作品だと思います。

投稿者 Maria : 2007年9月 6日 08:14

>Mariaさん
どんな理由があるにせよ絶対に罪を犯しては
いけない。そのことを強く感じます。
乃南アサさんの「風紋」と「晩鐘」を読んだ
ときにも、同じことを感じました。
加害者、被害者、そしてその家族たち、だれも
救われません・・・。

投稿者 ゆこりん Author Profile Page : 2007年9月 6日 11:42