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2014年4月28日
満願(米澤穂信)
鵜川妙子が矢場英司を刺殺した!彼女はなぜか控訴を取り下げ、懲役八年の一審判決が確定した。彼女の真の動機とはいったい何だったのか?表題作「満願」を含む6編を収録。
起こってしまった出来事・・・。人はその表面に見える事実しか知らない。だが、その出来事の裏には、複雑に絡み合いうごめいている人の思惑がある。人の不思議さ、人の怖さ、人の面白さ。作者は6編の話の中で、そのことを巧みに描いている。表題作の「満願」はなかなかよかった。鵜川妙子という女性の執念には驚かされた。何かを守るためにはそんな力も出せるものなのか・・・。また、それ以上に印象に残ったのは「夜警」だった。川藤浩志というひとりの巡査の死は、本当に惜しまれ二階級特進に値するものだったのか?彼の裏の顔を知ったときには、ぞくっとするものがあった。
6編の中にはインパクトが弱い話もあったが、どの話も興味深く読んだ。人の心はまさに複雑怪奇・・・。読後、不思議な感じの余韻が残る作品だった。
ゆこりん : 20:31 | 作者別・・よねざわほのぶ