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2014年2月12日

ペテロの葬列(宮部みゆき)


杉村三郎は、ある日バスジャックに遭遇する。犯人は拳銃を持った老人だったが、事件はすぐに解決した。だが、被害に遭った乗客たちに意外なことが起こった。老人の謎、乗客に広がる事件の波紋とは?杉村三郎シリーズ第3弾。

バスジャック犯の老人とバスの乗客たちのやり取りは緊迫感があり、読みごたえのあるものだった。事件解決後の、老人が事件を起こした動機を調べるところも面白かった。一方、杉村とともに事件に遭遇した杉村の上司の園田の過去も明かされ、衝撃を受けた。人は心の中にさまざまなものを抱えながら生きているのだと、改めて感じた。
善と悪は、表裏一体だと思う。人は、気づかぬままに悪に染まることもある。悪いことだと分かっていても、自分を守るためにやむを得ず行動してしまうこともある。ほんのちょっとの心のすき間に入り込む悪。いつかは自分自身に起こるかもしれない・・・。絶対にないとは言い切れないだけに、たまらなく不安になる。
700ページ近くの大作だが、惹き込まれ一気に読んでしまった。面白い作品だと思うが、ラストはとても驚いた。どんな理由があるにせよ、やってはいけないことだと思う。また、こんな理由はとても納得できない。意外なラストだったが、後味が悪すぎる。読後に嫌な思いが残ってしまったのは、残念だった。

ゆこりん : 19:58 | 作者別・・みやべみゆき