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2013年4月28日
神々の山嶺(夢枕獏)
ネパールの首都カトマンドゥの路地の奥の登山用具店で見つけたものは・・・。すべてはそこから始まった。マロリーのものと思われるカメラを追う深町は、ひとりの男と出会う。伝説の登山家、羽生丈二だった。深町は、しだいに羽生という男にのめり込んでいくのだが・・・。
イギリスの登山家ジョージ・マロリーは、エヴェレスト初登頂に成功したのか?マロリーが遭難死してしまった今、1924年の登頂には数多くの謎が残る。その謎を解く最大のカギが、マロリーのカメラだと言われている。残念ながら未だに発見されていない。この小説では、そのマロリーのカメラが実に効果的に使われている。カメラを追ううちに、深町はそのカメラの発見者である羽生に興味を抱くようになる。知れば知るほど、羽生という男に惹かれていく。
それにしても、人はなぜこれほどの危険を冒してまでも山に登るのだろう。常に死と隣り合わせだというのに。読んでいると、無事下山できるのが不思議なくらいの過酷な世界だ。たったひとつしかない自分の命。それを懸けてまで挑むということがどうしても理解できない。だが、羽生も深町も、エヴェレストに命を懸ける。その描写の迫力は、読み手である私を圧倒する。羽生の、深町の、執念に満ちた息づかいが聞こえてくるようだ。山は・・・すごい!
とても面白い作品だと思う。けれど、後半にダラダラしていると感じる部分があって、飽き気味になってしまった。ラストもでき過ぎのような気がする。個人的に、少々不満が残る作品だった。