« そして謎は残った(ヨッヘン・ヘムレブ他) | メイン | 3652(伊坂幸太郎) »

2012年11月 6日

千年樹(荻原浩)


樹齢1000年と言われているくすの木の大木。その木は、いろいろな人たちの生と死を見つめてきた。はるか昔の人々から現在の人々までの、さまざまな生きざまを描いた作品。8編を収録。

おのれに課せられた運命を静かに受け入れ、ただひたすら枝を伸ばし生きてきた木。そんなくすの木のまわりで、さまざまな人間ドラマが繰り広げられた。いったいくすの木は何を思っていたのだろう。過去と現在のできごとが、くすの木のまわりで交錯する。どの話も強烈なインパクトを持って迫ってくるが、そこから感じるのはやるせなさばかりだ。こんな悲しい話ばかりを描いて、作者は読み手に何を訴えようというのか?人生、そんなにつらいことばかりではないはずなのに。ただただ心が暗くなるばかりで、読んでいて得るものが何もなかったような気がする。後味の悪さだけが残った。また、「千年樹」というタイトルが示すような、壮大な時の流れを感じさせる物語を期待していたが、それがあまり感じられなかったのが残念だった。

ゆこりん : 18:04 | 作者別・・おぎわらひろし