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2012年5月 1日

夢違(恩田陸)


夢をデジタル化し、「夢札」として保存することができるようになった。「夢札」を解析する夢判断を仕事とする浩章は、つねに疑問を抱えていた。「結衣子は生きているのではないのか?」それを裏付けるような不思議なできごとが、各地の小学校で起こり始めていた・・・。

小学生の夢札を見続ける浩章。そこに映し出された思いがけないものにぎょっとする。いったいそれは夢の中だけのできごとなのか?それとも現実の世界につながるものなのか?夢と現実。その境界線がしだいに消えていく・・・。そもそも我々自身は、本当に現実の世界を生きているのだろうか?もしかしたらこの世の中は、脳が見せる幻の世界なのかもしれない。そんなことを考え始めたら止まらなくなる。それと同時に、言いようのない恐怖に襲われた。この作品を読むと、自分自身の存在に確信が持てなくなってしまう。どこまでが夢でどこまでが現実なのか?最後までその疑問に対する答えは得られなかったが、恩田陸の世界を充分に味わうことの出来る面白い作品だと思う。

ゆこりん : 18:20 | 作者別・・おんだりく