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2011年12月18日

オイアウエ漂流記(荻原浩)


トンガ王国ファアモツ空港から飛び立った飛行機が行方不明に!乗客は10人。接待出張の面々、怪しげな外人、仲がいいのか悪いのか分からない不思議な新婚カップル、痴呆気味な老人とその孫、機長の犬・・・。無人島にたどりついた彼らに、明日はあるのか!?

日本から遠く離れた無人島においても、上司風を吹かせる男とそれに従う部下。なんだか典型的な日本の会社組織を見せられている気がする。こんな状況でも威張り散らす男が、愚かというより哀しく見える。だが、みんなが「生き抜く。」というひとつの目標に向かい始めたときに、立場に微妙な変化が生じる。人間、生きるためには必死になるものだ。知恵を出し合い、工夫を重ね、10人は救助される日をひたすら待ちながら生きていく。日々おのれの命と向き合うようなギリギリの環境は、ふだんの生活からは見えない人間の本質をあらわにする。他人の意外な面ばかりではない。自分自身の意外な一面を知ることになる。人間とは何か?生きるとは何か?作者は読み手に問いかけてくる。
「どんな状態に置かれても、可能性は最大限に生かす。そうすれば、道はきっと開ける!」読んでいてそのことを強く感じた。

ゆこりん : 17:26 | 作者別・・おぎわらひろし