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2011年9月30日

あわせ鏡に飛び込んで(井上夢人)


気の進まないままパーティに出席した城所病院の院長城所優一は、主催者である天沼稔に声をかけられる。城所病院で死んだ妻の死因に疑問を持つ天沼は、言葉巧みに城所をアトリエに誘い真相を聞きだそうとする。だが、城所は決して真実を語ろうとはしなかった。ついに天沼は最後の手段に出た・・・。表題作「あわせ鏡に飛び込んで」を含む10編を収録。

軽いミステリーという感じだが、星新一さんのショートショートのような独特の味わいの話もある。「ノックを待ちながら」の話は、読み手に強烈な余韻を残す。「いったいどうするのだ!?」と叫びたくなる。「あなたをはなさない」では、愛する男と別れたくないという執念にも似た女心の恐ろしさを見せつけられる。「さよならの転送」は、携帯電話がそれほど普及していなかった頃に描かれた話なので今読むとちょっと古臭い感じもするが、アイディアが面白かった。どの話も巧みな展開で、サラリと読める。ラストのまとめ方もすっきりとしていて、読後感も悪くなかった。まあまあ楽しめる作品だと思う。

ゆこりん : 17:31 | 作者別・・い他