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2011年8月29日

果つる底なき(池井戸潤)


「なあ、伊木、これは貸しだからな。」「いまにわかる。」
坂本の謎めいた言葉の裏には、いったい何があったのか?ハチに刺されたことによるアレルギー性ショックで死んだ坂本。だが、単なる事故ではなかった!その陰には、黒く醜い思惑がうごめいていた。伊木は、坂本の死の真相に迫ろうとするのだが・・・。

上司と対立し左遷された伊木。これ以上問題を起こせば、銀行マンとしてやっていけなくなるかもしれない。だが彼は、坂本の死の真相を追い求める。調べれば調べるほど、疑惑が増えていく。「融資」を利用した巧妙な不正。決して姿を見せようとしない黒幕。その狡猾さには憤りを感じた。巨大な銀行・・・。その中で人より抜きん出たいのなら、並大抵の努力では無理だ。一度でも出世コースから外れてしまったら、そこに待っているのは絶望的な現実だけだ。そのことが今回の悲劇を生んだのかもしれない。
序盤から中盤、そして終盤へ、その構成力は見事だ。また、銀行内部の事情も詳細に描かれていて、さすがだと思った。池井戸潤にしか描けない世界だ。最後まで読み手をつかんで離さない、とても面白い作品だった。

ゆこりん : 20:28 | 作者別・・いけいどじゅん